日本版AARO設立へ——UAP専門機関設置の議論・課題・2025年5月提言の全内容
米国のAAROに相当する「日本版UAP専門機関」設置の議論が進んでいる。2025年5月のUFO議連提言の全内容と、設置への障壁・国際比較・実現シナリオを詳細に分析する。
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AAAROとは——日本が目指すモデル
AARO(All-domain Anomaly Resolution Office:全領域異常解決局)は、2022年7月に米国防総省内に設置されたUAP専門機関だ。空・海・宇宙・サイバー領域で発生するUAPを統合的に収集・分析・報告する機能を持ち、年次報告書を議会に提出する義務を負う。設置後わずか2年で「米国のUAP情報公開の中核」として機能しており、グラッシュ証言の受け皿機関としても機能した。
UFO議連は2024年の設立当初から「日本版AAAROの設立」を最重要目標の一つに掲げており、2025年5月の提言書でその具体像を示した。
2025年5月提言の全内容
UFO議連が2025年5月に内閣官房・防衛省・文部科学省に提出した「UAP情報統合センター設立に関する提言書」の要旨は以下の通り:
設置場所:内閣官房(国家安全保障局隣接)。防衛省単独ではなく、内閣府直下の横断的組織とすることで情報の省庁間共有を促進する。
機能:①UAP情報の一元収集(自衛隊・警察・気象庁・JAXA・民間からの報告受付)、②多機関横断分析、③年次報告書の国会提出義務、④内部告発者保護制度の整備、⑤米国AARO・同盟国との情報共有窓口。
予算規模:初年度20億円程度(AAROの予算規模を参考に日本の規模に調整)。
人員構成:専門分析官10〜15名(物理学・航空工学・電気工学の専門家)+自衛隊出向者5名+内閣官房・外務省担当者各2名。
設置への3つの障壁
障壁①:情報の「縦割り」問題
日本の省庁間情報共有は慢性的な「縦割り」問題を抱えており、防衛省・外務省・警察庁・文科省が保有するUAP関連情報を一元化することは、制度設計上の難題だ。特定秘密保護法の枠組みでは、省庁間の情報共有にも厳格な手続きが必要で、「横断的な情報統合」を実現するには新立法が必要とされる。
障壁②:「スティグマ」による人材確保の困難
「UFO・UAP研究は非科学的」というスティグマが日本のアカデミアでは根強く、優秀な研究者が専門職として就くことをためらう傾向がある。米国では「国家安全保障上の重要問題」として位置づけることでこの問題を解消したが、日本でも同様の「格上げ」が必要だ。
障壁③:予算確保の政治的困難
防衛費のGDP2%化(2022年決定)で防衛予算は増加しているが、「UAP専門機関」への新規予算割り当ては国会での説明責任を伴う。野党からの「なぜUFOに税金を使うのか」という批判は容易に予想でき、木原官房長官発言後も「UAP問題は安全保障だ」という認識の社会的定着が必要条件となる。
国際比較——日本は何番手か
UAP専門機関を設置・設置予定の国:米国(AARO、2022年設立済み)、英国(DI UAP Team、機能強化中)、フランス(GEIPAN、1977年設立・現在も活動中)、ブラジル(UAP委員会、2023年設立)、イタリア(議会UAP委員会、2024年設立)。日本は2026年現在、「設置に向けた議論段階」であり、主要先進国の中では最も遅い部類に属する。
→ 関連:UFO議連活動記録/木原官房長官発言/2026年以降の展望